ダイヤに勝るとも劣らぬエメラルドの希少性と美しさを感じ取っていただければ幸いです。
エメラルドの発見
歴史上はじめてエメラルドを産出したのは、紀元前3000年~紀元前1500年のエジプトでの記録によるものです。
ファラオが好んで身に着けていたというエメラルドですが、のちにクレオパトラが自分の名前の鉱山を所有していたことも知られています。
その後、ヨーロッパでエメラルドが普及したのは16世紀になってからのことでした。
スペイン人が南米へ渡り、原住民が宗教儀式で使うこの緑色の石を初めて目にして驚き、金銀と交換したとも、無理に奪い取ったともいわれます。
当時、ダイヤモンドが世界で最も硬い物質であるといわれていて、初めて見るエメラルドがダイヤと同等か、それ以上に硬いものであるかを確かめるために、当初、いくつもの素晴らしいエメラルドを次々にダイヤで割ってしまったそうです。
たいへんに愚かな行為だったといわざるを得ません。
そして、何万カラットというエメラルドを船に乗せて運び去ってしまったのでした。
現在伝わるエメラルドの数々は古代にコロンビアで産出されたもののほかに、後の時代になってブラジル、アフリカ、インドや中東で産出されたものにも素晴らしいものがあります。
世界の有名なエメラルドをいくつかご紹介しましょう。
アンデスの王冠
1533年スペイン人のコンキスタドール(新大陸征服者)であるピサロが、南米のインカ帝国にやってきて奪い取った宝物の一つです。
インカ帝国、最後の皇帝となったアタワルパは、突然にやってきたピサロにより投獄されてしまいます。
アタワルパは部屋1つ分の金と2つ分の銀で釈放を要求したにもかかわらず、最終的にでっち上げ裁判の上で罪を言い渡され、最後にはキリスト教に改宗させられた挙句に処刑されてしまいました。
この王冠は442個のエメラルド(合計1521カラット)が使われています。
王冠本体は黄金でできていて、45㎏もの金の塊をくりぬいて作られたと伝えられています。
現在メトロポリタンミュージアムに保管されています。
イサベル女王
18世紀、やはりスペインのコンキスタドール(新大陸征服者)であるエルナン・コルテスが手に入れた宝石です。
もともとインカの宮殿にあったものを強奪し、カスティーリャ女王の名であるイサベルと命名したのもコルテスです。
彼はこのイサベル女王と一緒にマヤ、インカ文明の貴重な宝物を大量に手に入れていましたが、スペインへの輸送中に海難事故で水没させてしまいました。
それがなんと、1993年にフロリダ沖でダイバーチームにより発見されました。
このあたりの航路は昔からいくつもの船が沈没している場所として知られ、1756年のスペイン船の事故についても記録が残っていたのでした。
このエメラルドは、長方形の手のひらいっぱいの大きさがあり、重さにして964カラットとなります。
6角柱の、結晶のままの形をしています。
現在はアメリカの自然史博物館で保管されています。