今は使われていないような道具の名前もあります。
こんな名前があるの?と思われるような道具を選んでみました。
たぬき
ふいごのことを言います。
昭和の時代頃まで、貴金属制作はアグラの形で床に座って作業していました。
たぬきは床に置いて膝を使って押していたのです。
ふいごはオルガンやバンドネオンに使われていますが、火を使う作業にも欠かすことのできない道具です。
今は電動のコンプレッサーを使いますが、ふいごは電力を使わずに空気を送ることができます。
しかも風力の微妙な調節がし易いので、慣れればコンプレッサーより使い勝手がいいものです。
今もショップにはたぬきの備品が置いてあるのを見かけるので、使っている職人もいるようです。
今でいうローラーのことを指してネコと言っていました。
貴金属制作の現場では比較的大型の道具なのでまるで猫が居座っているかのように見えますが、何より固定金具で留める足が、アンティーク家具のような猫足だからでしょう。
大きなダイヤルをゆっくり回す作業は猫のイメージがわいてくる気がします。
とんぼ
今ではほとんど使う人はいないと思われますが、昔のドリルです。
古代人が火をおこす道具と仕組みは一緒なのでしょう、見た目がそっくりです。
先端のドリルチャックにドリル刃を装着して一点に向かって回転して切り込んでいきます。
トンボは使いやすいよ、思ったほど悪くないよ、という人もいますが、今の手動式のドリルはダイヤル式になっていて、馴染みがあるからか今の方が断然使いやすいと思います。
もっと簡単に穴を開ける電動の機械はいろいろありますが、微妙な手の感触を活かして開けていく場合は手動が一番です。
臨機応変に適材適所で使いまわすのが大切ではないでしょうか。
とくさ
木賊、研草と書きます。
つくしのように節があり地下茎で伸びてどこまでも増えるので、少々嫌がられたりする草ですが、昔はこれをソフトなヤスリとして使っていました。
昔と言っても、昭和の時代にはまだまだ便利に使われていましたから、それほど古い話ではありません。
今でもヤスリ掛けが難しい隙間などに磨きをかけるときには役に立ちます。
春夏の草の青い時期はその都度、庭から摘んできて使うこともできますが、秋冬の草が枯れてしまう時期は、青草を乾燥させたものを使用します。
乾燥させた方がきめ細かな仕上げができるのです。
櫛ものを作る時には重宝します。
ねずみのしっぽ
ヤスリを指してねずみの尻尾ということがあります。
ヤスリと言っても、JIS規格でいう12本組ヤスリのことです。
ヤスリにも工業規格(JIS)があって、12本組というのはサイズの名称で、貴金属品の細かな部分を削るのに適した細いヤスリです。
12種類そろっています。
確かにねずみの尻尾の太さだと思います。